眠られぬ夜のために
2021年3月27日
こんにちは
北村です。
今回は、「眠られぬ夜のために」 カール・ヒルティ著 岩波文庫発行
という本をご紹介します。
「眠れない夜はつらい。
しかし、
いたずらに嘆いていないで、我々はそれを、日々怠りがちな自己反省のための
静かな妨げられない時間として活用しようではないか。」
ヒルティは読者に向かって、こう語りかける。
スイスの哲学者で、国際法の大家でもあった著者が、聖書の言葉を引きながら
人はいかに生き、いかに自分を深めてゆくかを、諄々と説く。
※1月1日から12月31日 までの365回の詩編形式でつづられていて
キリスト教精神をバックボーンに、人生の道しるべが語られています。
100年前生きた著者が、時空を超えて現代の悩める人々に語りかける。
古典的名著です。
★ 本文より
11月17日
私は生涯にいくどか人間軽蔑者になりそうな時期があった。
そうならずにすんだのは、たしかに人間社会の上層の人びとと知り合っていたためではなく、
反対に、ささやかな人々の生活や考え方を深く理解したおかげである。
この世の小さなものに対する関心と特別の愛を持つようになると、
現代の病気であるペシミズム(悲観主義)に永久にかからなくなる。
これに対して、高いものや、高貴なものや、うわべだけ目立つものに対する、
たとえ秘かにであっても、何らかの憧れが心の中に残っているかぎり、
「この世の君」は、いぜんとしてその人びとに対して権限を失ったわけではなく、
彼らはゆるぎない幸福に達することができない。
なお、言い添えておきたいのは、通常小さなものは、それを深く心にとめると、
一般に大きなものよりも、はるかに興味ある、愛すべきものだということである。
巣のなかで観察された蟻。勤勉な蜜蜂や、鷽などは、
ライオンや鷲や鯨などよりもずっと見ごたえがあり、興味深い動物である。
また、小さな高山植物は、派手なチューリップやモダンな観葉植物よりもはるかに美しい。
人間の場合も、その通りである。
この世の小さなものに眼を注ぎなさい。
そうすれば、人生は一層豊かに、満足すべきものとなるのである。