いとみち
2021年3月14日
皆様こんにちは
北村です。
3月も半ばになりました。日中は事務所の近くでも小鳥のさえずりが響き渡るようになり
春の訪れを五感で感じられるようになってきました。
今回は 「いとみち」 越谷オサム著 新潮文庫 発行
という本をご紹介します。
著者の越谷オサムさんは 私のとても好きな作家さんの一人です。
代表作として、映画にもなった「ひだまりの彼女」というベストセラー小説もありますが、
私個人的には、こちらの作品の方がとても印象に残っています。
主人公の相馬いと は青森県の女子高生。
高校生活やアルバイト先での人間関係のなかで、周囲の人たちに支えられながら少しすつ成長してゆく
「心の軌跡」をユーモアと感動で描いています。
津軽弁でつづられてゆく、登場人物たちの言葉の数々にも、とてもインパクトがあり惹きつけられます。
少し心が疲れた時、 お勧めの1冊です。
★あらすじ
相馬いと。 青森の高校に通う16歳。
人見知りを直すため、思い切ってはじめたアルバイトは、
なんと「メイドカフェ」
津軽訛りのせいで挨拶も上手に言えず、ドジばかりの「いと」だったが
シングルマザーの「幸子」や、お調子者の「智美」ら先輩に鍛えらえ、少しづつ前進してゆく。
なのに!!
メイドカフェに閉店の危機が・・・・・・
初々しさ炸裂、
誰もが応援したくなる最高にキュートなヒロインの登場です。
☆本文より
悪ぐねな。
本番を前に固くなる一方の自分に、心の中で言い聞かせる。
窓の外は大粒の雨。
こぎん刺しの暖簾が掛かったドアの向こうでは、たくさんの人びとのざわめき。
この狭い事務室だけが、時間が止まったように静まっている。
鏡の中のメイドの目を見つめる。
あいかわらず頼りなく、いまにも泣き出しそうに揺れている。
だが、泣いてはいない。
ここでアルバイトを始めた頃に比べれば、自分だって少しは強くなったはずだ。
これまでさんざん泣いてきたけれど、これからはもう泣かない― つもりだ。