余命10年
2018年10月5日
こんにちは 北村です。
今年は台風の襲来回数がとても多く、建築工事関係者の立場としては
大変な気苦労がつづいていることと思います。
すべての建築中現場が無事安全に工事を終えられることを願うばかりです。
今回は
「余命10年」 小坂流加 著 文芸社文庫NEO 発行
という本をご紹介します。
※ あらすじ
二十歳の茉莉(まつり)は、数万人に一人という不治の病にたおれ余命は10年であることを知る。
笑顔でいなければ、周りが追いつめられる。
何かをはじめても志なかばで諦めなくてはならない。
未来に対する諦めから、死への恐怖は薄れ、淡々とした日々をすごしていく。
そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが・・・・・・・・
涙よりせつないラブストーリー
なにげなく手に取った文庫本でしたが、読み始めると一気に読んでしまいました。
余命10年という理不尽な自分の運命に対して立ち向かった一人の女性の心の軌跡が描かれています。
今、自分が同じ立場に置かれたらどうしたらよいのか・・・ということを考えながら読ませていただき、
また、ひとを見る、物事を観るということ一つとっても とてもとても難しいことなのだな と改めて考えさせられました。
もしかしたら、自分は人生をいう時間を無駄にすごしていることがとても多いのではないか・・・
「自分がこの世を去る時間」という地点から逆算して現在の生き方を考え直してみることが
とても大切なのでは・・・と しみじみ思いました。
★ 本文より
「背負うばっかが偉いんじゃないよ? 茉莉はいっぱい頑張ってるよ。だから胸張って。自信もって。
お祭りお祭りって言われてるけど、あんたは茉莉花の茉莉なんだから、無理に騒がなくていいんだよ。
誰かを楽しませるばっかじゃなくていいの! わがまま言っていいの!
それで茉莉に背を向けるヤツは捨てていいの!・・・ わかった? 自分だけ苦しまなくていいの、茉莉。」
「・・・・・ありがとう。大好きだよ、早苗ちゃん」
電話を切ると、茉莉は膝に顔を埋めて嗚咽を押し殺した。
今夜はすべてが愛おしかった。
手放したくないものばかりが、すぐそこにあったことに気付いて、胸が張り裂けそうだった。
もっとずっと、生きていたい。・・・・・・
空のバスタブの中で膝を抱えると、茉莉はいつまでもいつまでも泣いていた。
※
愛してるって、むせ返るほど苦しい。重くて深くて溺れてしまう。
溺れる時は一人で沈まないと。
和人(かずと)に手を伸ばさない覚悟を決めないと。
さあそろそろ。
死ぬ準備を始めなくては・・・・・・・・・・