滔々と紅
2018年5月31日
こんにちは 北村です。
今日で5月も終わりです。
明日からは6月となり、鬱陶しい梅雨の季節がやってまいります。
また、衣替えの時期となってきて、そろそろ夏の訪れを感じる季節でもあります。
今回は
「滔々と紅」 志坂 圭 著 ディスカヴァー文庫 発行
という書籍をご紹介いたします。
★あらすじ
天保8年、飢饉の村から9歳の少女「駒乃」(こまの)が
人買いによって江戸大遊郭「扇屋」へと口入りされた。
「駒乃」は吉原のしきたりに抗いながらも、
手練手管を駆使する人気花魁、「艶粧」(たおやぎ)へと成長する。
忘れられぬ客との出会い、突如訪れる悲劇、苦界(くがい)吉原を
力強く生き抜く女性の最後に下した決断は・・・・・
この作品は2014年 全国の書店員が選ぶ、世に出したい新作
第1回本のサナギ賞・大賞受賞作 です。
閉ざされた苦界「吉原」のなかで、もがき苦しみながら希望を忘れずに生き抜く「駒乃」。
暗闇にも思える環境のなかでも一筋の光を求め生きることの大切さを教えてくれる物語です。
※ 本文より
「今日からお前は、わっちの禿(かむろ)で「しのほ」じゃ。
ここに一歩足を踏み入れた時から名前が変わるんじゃ。
源氏名というんじゃ。
ここ吉原は世間からは苦界とか地獄とか呼ばれておる。お前にもそのうちわかる。
ここから生きて出たければ強い心を持たんといかん。それができない者は死んでゆく。
馴染む者には極楽じゃ、嫌う者には地獄じゃ。
まあ、これはどこでも同じじゃがな・・・・・・ 地獄か極楽かはお前さん次第じゃ」
駒乃は急に威勢を落とし、今更のように しょげた。
「あたしは地獄に来たんじゃな。きっとあれがいけなかったんじゃ・・・・・・・・・」